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神戸家庭裁判所 昭和39年(家)121号 審判 1964年3月16日

被審人 山本勇(仮名)

被後見人 山本洋子(仮名) 外一名

主文

被審人山本勇が被後見人山本洋子、同山本道子の後見人たることを解任する。

理由

被審人山本勇は、昭和三八年一二月一七日付審判により、亡姉芳子の子である未成年者山本洋子、同山本道子の後見人に選任せられてその職に就いた者である。ところが山本洋子、山本治男の審問結果、○○産業運輸有限会社からの調査官宛回答書、同会社と被審人との間の示談書、被審人に対する前科取調書、裁判書謄本、起訴状謄本の各記載ならびに昭和三八年(家)第一四七〇、第一四七一号後見人選任申立事件記録によると、被審人を後見人に選任する審判当時判明していなかつた事実として、被審人には職業安定法違反(接客話紹介)で罰金一万円、麻薬取締法違反(麻薬所持)で懲役二年の前科があるほか、現に神戸地方裁判所竜野支部に傷害罪で起訴せられ、公判係属中であること、その公訴事実は姉山本芳子(未成年者山本洋子、同道子の母)の交通事故死に伴う損害賠償金受領に必要な書類の作成について紛争の結果、兄山本治男の妻竹子に傷害を与えたものであること、被審人は昭和三八年六月二六日当時まだ未成年者両名について、後見人その他法律上同人らを代理する資格がなかつたのに、山本洋子代理人名義をもつて、交通事故加害者○○産業運輸有限会社との間に山本芳子の死亡による総額一一〇万円の示談金契約を締結し、内金三七万七千円を即日現金で受領していることが認められる。そして、当裁判所がこの金員の保管および収支の状況について報告書の提出、保管金品の提出を求めてもこれに応じない(当庁昭和三九年(家)第一二三、第一二四号後見事務に関する処分事件)し、本件においても期日に出頭しない。一方山本洋子の審問結果によれば、被審人は上記金員を借家の敷金や身廻品の購入等自己の用途に充当している事跡が認められる。

以上の事実は後見事務に関する報告等を除いては、被審人が後見人就職以前のことではあるけれども、これが判明しておれば、当然被審人を後見人に選任するようなことはしなかつたであろう事由である。そして現に被審人は当裁判所の命令や取調にも応じないのであるから、被審人には民法第八四五条にいう後見の任務に適しない事由があるものといわなければならない。よつて被審人が未成年者山本洋子、同道子の後見人たることを解任するのを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 坂東治)

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